COLUMNコラム
電子タバコと禁煙
呼吸器内科外来に来られる患者さんに「電子タバコに替えれば禁煙しなくても大丈夫ですか?」と聞かれることが多いので、今日はこの話題を取り上げました。
最近は街中でも、紙巻きタバコに代わって、加熱式タバコや電子タバコを使用している方をよく見かけます。
公共の場所や歩道で、電子タバコを使用している方も多く、紙巻きタバコよりも、近くで使用しておられても、周囲も気付きにくい傾向があります。
しかし電子タバコも、御自身に対する有害性や、周囲の方への受動喫煙の影響などは、紙巻きタバコと同様であるとの見解が『日本呼吸器学会』からも示されています。
紙巻きタバコと比べて、使用していても目立ちにくく、一見有害性が少ないように見える電子タバコですが、それゆえより一層、気が付かない間に晒されている、有害性や受動喫煙などに注意が必要と、我々『呼吸器専門医』は考えています。
また電子タバコと禁煙に関連したものとしては、最近の『New England Journal of Medicine』の論文で、禁煙治療において、従来のニコチン代替療法と、電子タバコを用いた場合の、禁煙成功率を比較したというものがありました。
結果は電子タバコを用いた場合の方が、ニコチン代替療法よりも、禁煙成功率が高かったとの内容でしたが、この論文は禁煙治療を目的としたのもであり、電子タバコの有害性を否定するものではありませんので、その点には注意が必要です。
健康診断の呼吸機能検査で、閉塞性障害などの異常を指摘され受診される方の中には、御自身は喫煙しないけれども、他の御家族の方が愛煙家で、受動喫煙によりCOPDを発症したという方も、少なからずいらっしゃいます。
外来に来られる患者さんの反応を聞いていると、御自身の健康のために禁煙をお勧めするよりも、大切な御家族のために禁煙をお勧めした方が、個人的には禁煙に成功される方が多い印象です。
禁煙治療については、新たな試みも色々論じられていますが、「子供が産まれたから」「家族が喘息持ちだから」など、大切な方への想いが、結局は一番の禁煙治療薬なのかもしれませんね。