COLUMNコラム
大人の風疹と先天性風疹症候群
小児に流行する感染症のイメージが強い風疹ですが、最近は『大人の風疹』が問題になっています。
風疹は、風疹ウイルスによる感染症で、春先から初夏にかけて流行する傾向が見られます。
くしゃみなどの飛沫により上気道に感染して、約2週間の潜伏期間の後、発熱、発疹、リンパ節腫脹などの症状が認められます。発疹は粟粒大の丘疹で、全身に出現しますが、数日で消退します。
一度罹患すると、ほとんどの人は終生免疫が得られるため、従来は集団生活に入りたての幼児や小学校低学年の児童に多く見られましたが、最近は大人の風疹が多く認められます。
大人が感染すると、発熱や発疹の期間が子供に比べて長く、関節痛などの症状も強く出現する傾向にありますが、その中でも特に問題となっているのが、妊娠初期の妊婦さんへの感染です。
特に妊娠20週までの、風疹抗体を持たない妊婦さんが感染すると、難聴、心疾患、白内障、精神や身体の発育遅延を持った赤ちゃんが生まれる可能性があり、先天性風疹症候群(CRS)として知られています。
予防接種などによる抗体獲得により、先天性風疹症候群は予防が可能ですので、今後妊娠を希望する方は、予め風疹抗体の有無を確認して、抗体がなければ予防接種を受けることをお勧めいたします。
注意が必要な点としては、予防接種後2ヶ月間は避妊が必要であり、また現在妊娠されている方は予防接種が受けられません。
現在すでに妊娠されている方も、御家族様からの感染例も認められますので、併せて御家族様の抗体有無の確認もお勧めしております。
麻疹・風疹の予防接種は2回行なうことによって、ほぼ確実に抗体を得られ、予防が可能な感染症です。
風疹から御自身の身を守り、また生まれてくる赤ちゃんを先天性風疹症候群から守るためにも、風疹の抗体有無の確認と、抗体がない方への予防接種を、社会全体で進めていく必要があると考えています。
当院では『総合内科専門医』と『産婦人科専門医』が共に診療に従事しておりますので、妊婦さんや御家族様も含めて、不安なことや心配なことがあれば、お気軽に御相談頂ければと思っています。