COLUMNコラム
夏風邪のような症状が繰り返し長引く時
前回は梅雨と喘息発作の関連についてお話ししましたが、今日はまさにこの時期に特徴的な呼吸器疾患についてのお話です。
梅雨の時期は高温多湿の環境により、古い木造家屋や密閉度の高いマンション、エアコンや空気清浄機などの空調設備内でカビが発生しやすくなりますが、実はこのカビが原因で熱や咳などの夏風邪に似た症状が長引くことがあります。
これらは夏風邪とは異なる『過敏性肺臓炎』という疾患で、カビやその他の様々なものに対するアレルギー反応により引き起こされる肺炎ですが、その中でも特にトリコスポロンというカビを吸入することで引き起こされる『夏型過敏性肺臓炎』は、この梅雨の時期に西日本圏で多く見られます。
診断は病歴や血液検査、画像所見、気管支鏡検査などの検査結果を併せて判断しますが、トリコスポロン属の中でも血清の抗体検査として保険収載されているのはトリコスポロン・アサヒ抗体のみで、明らかな原因の特定に至らない症例も少なからず経験します。
軽症であれば原因抗原の除去(家屋や空調設備の掃除、入院などによる環境からの隔離など)のみで症状が改善する症例もありますが、中等症以上の症例では酸素吸入やステロイド投与を要することもあります。
毎年この梅雨の時期になると熱や咳などの夏風邪症状を繰り返したり、空調設備を使用すると体調が悪くなったりする方、実は『夏型過敏性肺臓炎』が原因かもしれません。
一般的にはあまり聞きなれない病名かもしれませんが、呼吸器内科医にとっては頻繁に出会う疾患のひとつですので、熱や咳などの症状が繰り返し長引いてお困りの方は、一度お近くの『呼吸器専門医』に御相談下さい。