COLUMNコラム
コロナメタボと睡眠時無呼吸症候群
新型コロナウィルス感染症流行に伴う外出自粛期間中に、運動不足や食生活の乱れ、飲酒量の増加などにより、肥満や糖尿病、高血圧症、高脂血症などの生活習慣病増悪を来たしてしまったというご相談が増えており、健診に来られる方からも『コロナメタボ』という言葉も聞かれるようになりました。
また生活習慣の急激な変化によるストレスに加えて、体重の変化や飲酒量の増加に伴い、不眠や睡眠時のいびき、日中の眠気や倦怠感、起床時の頭痛などの症状を自覚される方も散見されます。
これらの症状は、新型コロナウィルス感染症流行期におけるストレスに伴う症状と判断されていることもありますが、実は背景に睡眠時無呼吸症候群が隠れている例があります。
生活習慣病やメタボリックシンドロームと睡眠時無呼吸症候群は互いに密接に関連しており、新型コロナウィルス感染症流行期に伴う『コロナメタボ』だけではなく、睡眠時無呼吸症候群の増加にも注意が必要と考えられます。
現在我が国においては、約300万人以上の睡眠時無呼吸症候群の方がいらっしゃると言われていますが、CPAPによる治療を実際に受けておられるのは約10%程度とされており、残りの約90%の方は無治療または診断すら得られていないと考えられます。
睡眠時無呼吸症候群が、冠動脈疾患や脳血管疾患と深く関連していることは広く知られていますが、最近では高血圧症、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病との関連が注目されています。
閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)の原因と言えばまず肥満をイメージしがちですが、日本を含むアジア諸国では、下顎の形状や軟口蓋の位置などが原因となり上気道の閉塞を起こしている例が多く、欧米諸国と比較すると必ずしも肥満だけが原因ではないことに注意が必要です。
すなわち肥満によりOSASを起こしているのみではなく、OSASそのものが高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病を通して、肥満の原因となっている例も少なからず存在していると考えられます。
特に高血圧症の方では、約30%にOSASの合併を認めるとされていますが、その中でも薬剤治療抵抗性の高血圧症の方に限ると、約80%にOSASの合併を認めるとも言われており、OSASの治療により高血圧症の改善が得られた例も報告されています。
このように元より潜在的に生活習慣病の素因をお持ちの方が、『コロナメタボ』に続いて睡眠時無呼吸症候群の合併を引き起こし、生活習慣病やメタボリックシンドロームと睡眠時無呼吸症候群が互いに増悪させ合う負の連鎖に陥っている例も少なからず見られます。
新型コロナウィルス感染症流行期に、不眠や睡眠時のいびき、日中の眠気や倦怠感、起床時の頭痛などの症状が気になり始めた方や、血圧や血糖値がなかなか下がらないというような、コントロール不良の生活習慣病でお困りの方は、睡眠時無呼吸症候群の合併がないか、一度お近くの呼吸器内科で検査を受けてみられてはいかがでしょうか。
当院でも『総合内科専門医』『呼吸器専門医』が、生活習慣病やメタボリックシンドロームの管理も含めて、睡眠時無呼吸症候群の診断治療に従事していますので、気になる症状をお持ちの方はお気軽にご相談下さい。