COLUMNコラム
呼気一酸化窒素(呼気NO)検査について
当院はこれまでに長引く咳や痰などの症状を有する患者様に多くご来院頂き、咳喘息や気管支喘息を始めとした様々な呼吸器疾患の診断や治療に力を入れております。
長引く咳は持続期間により、3週間未満の急性咳嗽、3週間以上8週間未満の遷延性咳嗽、8週間以上の慢性咳嗽に分類されています。急性咳嗽の原因の多くは感冒を含む気道感染症ですが、持続期間が長くなるにつれ感染症の頻度は低下し、慢性咳嗽においては感染症そのものが原因となることは稀です。
慢性咳嗽の原因としては、咳喘息、アトピー咳嗽、副鼻腔気管支症候群、逆流性食道炎、慢性気管支炎などの、気道感染症以外の原因が主に挙げられますが、その中でも咳喘息は日本でも頻度の高い成人慢性咳嗽の原因疾患です。
喘息の診断や治療経過の評価には、咳や喘鳴などの自覚症状やアレルギー素因の有無などの評価が重要ですが、他覚的な検査としては、呼吸機能検査、呼気一酸化窒素(呼気NO)検査、呼吸抵抗検査(モストグラフ)などがよく知られています。
「可逆性の気道狭窄」「気道過敏性の亢進」「気道の慢性炎症」などが喘息の病態において重要な要素とされていますが、昨今は自覚症状だけではなく「気道の慢性炎症」の評価が、喘息の診断治療においては特に重要視されており、「気道の慢性炎症」を他覚的に評価する検査として、「呼気一酸化窒素(呼気NO)検査」は喘息の診断治療において欠かせない検査となっています。
この呼気NO値は気道の好酸球性炎症により上昇するとされており、一般的に成人では 50 ppb 以上、小児では 35 ppb 以上であれば、気道の好酸球性炎症が明らかに存在すると考えられています。逆に成人で 25 ppb 未満、小児で 20 ppb 未満であれば、気道の好酸球性炎症が存在する可能性は低いと考えられており、日本人の成人健常者では呼気NO値の平均値は15 ppb 程度です。
実際の診療では、自覚症状と呼気NO値の測定を組み合わせて評価を行いますので、長引く咳や喘鳴などの症状を有していて、呼気NO値が 22 ppb 以上であれば喘息の可能性が高く、37 ppb 以上であればほぼ喘息と診断して間違いないと考えられています。
また呼気NO検査は喘息の診断においてのみではなく、既に喘息と診断された方の治療経過を評価するうえで、気道炎症コントロールの指標としても有用とされています。
検査はモニター画面を見ながら10秒間程度呼気を一定の速度で吹き込むだけで、外来でも侵襲なく簡単に測定出来ますので、吸入薬などにより気道の慢性炎症がコントロール出来ているかの治療評価にも用いています。
長引く咳や痰などの症状でお悩みの方は、呼気NO検査を含めた詳しい検査も含めて、お近くの「呼吸器内科」で検査を受けてみられてはいかがでしょうか。
当院でも日本呼吸器学会『呼吸器専門医』が、喘息の診断治療に従事していますので、お気軽に御相談下さい。