COLUMNコラム
春先の吸入抗原と気管支喘息
本日は「花粉・黄砂・PM2.5」など、春先に増える吸入抗原と、気管支喘息の悪化についてお話しします。
今年も、くしゃみ、鼻水、鼻詰まりなど、花粉症の症状に悩まされる季節になりました。
例年2月~5月頃にかけて、スギやヒノキなどによる花粉症の方が増えますが、時を同じくして、中国大陸から偏西風にのって黄砂やPM2.5が日本に飛来し、街中は様々な吸入抗原で溢れています。
PM2.5とは、粒子径が2.5μm以下の非常に小さな粒子のことで、吸入することで末梢気道にまで到達して、気管支喘息を悪化させる可能性があります。
一方で、スギ花粉の粒子径は約30μm程で、鼻腔などの上気道には付着しますが、末梢気道などの下気道には到達出来ず、従来は気管支喘息の増悪に直接関与しないとされていました。
しかし、花粉に黄砂やPM2.5などの大気汚染物質が接触すると、花粉の細胞壁に亀裂が入り、湿気や雨などを吸収して膨張破裂することで、花粉のアレルゲン物質が放出されることが分かってきました。
花粉のアレルゲンは1μm以下と非常に小さく、黄砂やPM2.5などの大気汚染物質とともに末梢気道に到達して、気管支喘息の増悪を引き起こします。
こうして「花粉・黄砂・PM2.5」が相まって、アレルギー性鼻炎と気管支喘息双方の増悪に影響を及ぼしていると考えられています。
昨今は『one airway(気道) one disease(疾患)』という概念が提唱されており、これは花粉症を含めたアレルギー性鼻炎などの上気道疾患と、下気道疾患である気管支喘息が、互いに密接に関連していることを示唆するものです。
実際に、アレルギー性鼻炎の約30%の方に気管支喘息の合併が認められ、また鼻炎を有することは、その後の気管支喘息発症のリスク因子であることも報告されています。
「花粉・黄砂・PM2.5」などの飛散量の多い日は、外出や屋外での運動を控える、マスクを着用するなどの工夫をするとともに、咳が続く方は一度お近くの『呼吸器内科医』に御相談下さい。