COLUMNコラム
新型タバコの気付かぬ受動喫煙にご注意
新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の流行に伴い、慢性閉塞性肺疾患(COPD)など喫煙に関連した呼吸器基礎疾患をお持ちの方の重症化率が高いことなどから、最近では禁煙や受動喫煙の予防にも注目が集まっています。
2020年4月1日から、健康増進法の一部を改正した法律(改正健康増進法)も施行され、今回は加熱式タバコや電子タバコなどの新型タバコによる、気付かぬうちの「受動喫煙」の問題についてお話しさせていただきます。
タバコの煙を非喫煙者が吸い込む受動喫煙を防止するために、2018年に成立した健康増進法の一部を改正する法律が、2020年4月1日から全面施行されており、屋内施設や店舗などの喫煙ルールも大きく変更されました。
米国では従来多く流通していた電子タバコに加えて、日本でも多く見かける加熱式タバコも使用されるようになり、電子タバコと加熱式タバコを併せて、新型タバコという総称で呼ばれることが多くなっています。
昨今はこの新型タバコによる健康被害が世界的に注目されており、特に使用者本人だけではなく、受動喫煙により気付かぬうちに周囲に及ぼす健康リスクへの懸念が高まっています。
燃焼式タバコの喫煙者から呼出される煙と同様に、新型タバコの使用者は見えにくいエアロゾルを呼出しています。
新型タバコの使用の際には、燃焼式タバコと同様の二次曝露対策が必要ですが、新型タバコは燃焼式タバコに比べて、周囲で使用されていても気付きにくく、知らずの間に副流煙に二次暴露されていることが多いという危険性があり、非喫煙者の方々も新型タバコの受動喫煙には充分に注意が必要です。
しかし改正健康増進法では、飲食等の提供は喫煙専用室では不可能ですが、加熱式タバコ専用喫煙室では可能となっており、残念ながらこれでは煙やにおいで気付きにくい新型タバコの受動喫煙に対して、充分に対策されているとは言えません。
また今回の新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の流行に伴う緊急事態宣言発出により、自宅で過ごす時間が大幅に増えているため、家庭内での新型タバコの気付かぬ受動喫煙のリスクも再び注目されています。
国内外から新型タバコによる健康被害の報告も、徐々に集積されつつあることから、国内でも日本呼吸器学会などを中心とした機関から「新型タバコが燃焼式タバコよりも健康リスクが低いという証拠はなく、いかなる目的であってもその喫煙や使用は推奨されない」という明確な提言がなされています。
新型タバコの受動喫煙による健康リスクについても、科学的証拠を得るにはかなりの時間を要しますが、特にCOPDなどを含む呼吸器疾患に対しては、従来の燃焼式タバコと同様に有害な影響が出ることが懸念されており、受動喫煙に関しても同様の認識がなされています。
日本呼吸器学会「呼吸器専門医」としては、新型タバコの副流煙は見えづらいということを常に念頭に置いて、新型タバコの気付かぬうちの受動喫煙が孕んでいる健康リスクが社会全体で広く認識されるように、これからも働きかけ続けていきたいと思っています。